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2006年5月 3日 (水)

映画 「香華」-「sayuri」より前の誇るべき日本映画

今日は、「香華」(木下恵介監督 有吉佐和子原作 1964年作)です。

この作品3時間半の2部構成の大作。文芸作品でこの大作とは。当時の日本映画華やかりし頃の映画。新文芸座でみましたが、松竹110周年でニュープリントですね。すごくきれいな状態でみれました。しかもシネマスコープ。

それにしても女の一生を描いた大河ドラマ。母と娘の確執と切っても切れない絆。朋子は小さなとき、203高地を落としたときに父とは病気による死別。奔放な母は、別の家に後家として入る。母郁代の嫁入り姿に「おかあさんきれい」と朋子。家に残された朋子は、祖母が死ぬと母の元へ。しかし継父とうまくいかず、静岡の楼閣に女中奉公として売られてしまう。13歳の時に自分が働くところへ母郁代もうられてくる。「おかあさんとは呼ぶな」とおかみさんからきつい一言。しかし稽古に稽古を重ね、東京の赤坂で一流の芸者となる。そこで、華族の旦那さんもついたのだが、飲みにきていた陸軍士官学校の江崎の純情に惚れてしまう。これが一生一代の恋となり、関東大震災を契機に、芸者から足を洗い旅館の女将に。しかし江崎は母が楼閣にいた女郎だと知ると去っていく。母郁代は何かにつけて朋子の世話になろうとする。下男だった八ろうと所帯をもち、都合が悪いときだけ朋子のところにくる。そんな母を朋子は「お母さんのせいで私は結婚できない!」と罵倒する。やがて戦争が終わり戦火で焼けた旅館も立て直すと江崎が戦犯で死刑になることにきまる記事をみつけ巣鴨プリズンに通う。やっとあえても江崎の家族と一緒。ひとことおひさしゅうございます。というだけ。病気の間に母は死ぬ。母が生前言っていた、あなたのお父さんの墓に入りたいということを、実現させようと朋子は故郷にいくが、冷たくあしらわれる。和歌山の海は寄せるだけの波がきこえる。と女将仲間と一杯交わすところで終わる。

それにしても、この映画見所が一杯。

まず、言うまでもなく、俳優さんの演技。それぞれ持ち味がすごくだされている。男にだらしない母郁代に乙葉信子。すごくいやみな淫靡な女で都合のいいときにしか朋子のところに現れない役がなりきっている。そして真面目な陸軍青年に加藤剛。一瞬しか出てこなかったけど、江崎の奥さん役に奈良岡朋子。これが面会の時に、朋子が離しかけると、割って入ってくるような、一瞬でもすさまじい演技を見せる。朋子を育てる女将役に杉村春子。これもどんな生き方をしてきたのだろうという演技をみせる。脇をかためる三木のり平も下男から郁代に思いを寄せ都合のいいように郁代にあしらわれる役がイヤミなくやってのける。なによりすごいのがやはり朋子役の岡田菜利子。20歳から60までを本当に年をとったのかと思わせる演技。そして乙葉信子とのからみが本当に親子と思えるよう。すさまじい人生を、体ににじませる演技はすごい。

またこの映画のセットはすごい。さすが伊藤ヨシキ。雨月物語やその他の映画のセットを作ってきただけのことはある。遊郭のセット、座敷のセット、旅館のセット、大きさがすごい。どうやって作ったのかと。セットは大きいだけでなく、そのなかで流れるようなカメラの動きがある。これは相当緻密につくらないとできない。当時スティディカムがあるわけでないのに、カメラは縦横無尽に旅館、座敷の中を動き回る。これもいまでは考えられない。

木下監督の演出も、違和感もなく切なくなりすぎずオーソドックスなかにも、時に母親の自分勝手な話を聞く後ろ姿の岡田菜利子の姿だけで怒っている演出をしたりとなかな見せる。旅館のシーンでは、江崎の旧友が来て相手していると、別の客が来てそちらで相手して、さらに母がくる。忙しい朋子を一気にわからせてくれる演出も心憎い。芸者の稽古のシーンもすごい。三味線の稽古のシーンは外から三味線が聞こえ、それに対する幼い朋子の噂話をしているシーン。そとは雪。雪の中から部屋の中へカメラがゆっくり入る。部屋の中では子供の朋子が必死に先生と対じしながら三味線のシーン。すごく緊迫感ただよう。びっくりするのがシネマスコープだけれども画面に無駄が全くない。だから見ていて飽きないのですね。きっと見ごたえのある映画って話に無駄がないのと、画面に無駄がないから疲れずにみることができるのですね。しかも大きい画面なので、ぐいぐいと話しに引き込まれて、演出の術中にはまっている。しかもこけおどしはほとんどない。すごいぜ!木下監督!!!

昨年末に「sayuri」を見た。あの映画では芸者同士の嫉妬の中で、一途な愛に生きる女の姿を見事なセットと振り付けで見せていて、そこそこ面白かったが、この映画の前半部分でしかない。それよりもおおきな切ない愛。芸者あったためにかなしい恋。また母に対する女としての嫉妬。それでも生きていく大きな力をテーマとしている。セットも負けてはいない。こんな映画が作れていた時代があったんだと改めて感じる。日本的とか、ハリウッド的とかを除いてもこちらの映画の方が分が大きい。2本を見て木下恵介の大すごくわかる。改めて感服しました。

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コメント

伊藤ヨシキって・・・映画検定一級だろ?詐称かよ(笑)

投稿: | 2016年4月29日 (金) 13時55分

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