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2006年5月29日 (月)

映画「無法松の一生」(三船敏郎主演) 男のせつなさ

BS11で以前ビデオに録ってあったものを見ました。

初見ではないはずなので、ただ録っていただけだったのだが、別のビデオを探しているうちに始まって見始めたら面白くて、面白くて。

最初は喧嘩をした松が帰っているはずだがと巡査が車屋にやってくる。巡査に隠そうと、叔母さんがいろいろ取り繕うが、そばを6杯注文しているところを見つかる。ここもコミカル。この警官も人がよく、「いや、いるのがわかっていればいいんだ。松が喧嘩したのは、小倉警察の師範だから。」と言って帰ってしまう。松は人気物。喧嘩早いが、その人柄から誰からも好かれているらしい。筋の通らないことが大嫌いで、それが高じて喧嘩をするらしい。今まで顔パスで入っていた芝居小屋で入るのを断られた為、芝居小屋の客席でにんにく焼きを始める。怒った劇場関係者と喧嘩になったが、地元やくざの親分に止められる。「お前が怒るのもわからなくない。でも何も関係のない、芝居を楽しみに来ていた客たちに、どう落とし前をつけるのか」とカッコよくいう。これが若い、若い笠智周。しぶいぜ。松は「すまねえ。申し訳ない。あやまる。」と全面的に頭を下げる。「なんと竹を割ったような男じゃ」とやくざの親分も上機嫌。

そんな松が木から落ちた子供を家まで送ったことから、軍人大尉の吉岡家に出入りするようになる。この家の主人は松を大変きにいり、「お前が軍人だったら、少将までは行っていただろうな」という。「いえいえ、大将です」と切り返す松。ところが、あっけなく吉岡は死んでしまう。残された夫人と、子供の面倒を見始める。とはいっても吉岡によくしてもらった恩があると。近くの学校の運動会では、飛び入りの徒競争で優勝し、子供にも希望を与える。そしてぼんぼん泣くんじゃないぞと、父親がわりのように接する。このあたりのエピソードで、ぼんぼんの凧の糸が絡まって、困っているのを人を乗せて通りかかった松が車に乗せているのを、そのままにして、糸を座って解いているとき、はるか後ろで、早くこっちに来いと後ろでパフォーマンスをしている、車の客のパフォーマンスが面白い。松がこれはダメだと、車に戻ると、客はなにもなかったように、怒りもせずに車に戻って座っている。これをワンシーンワンカットでとっている。たぶん客は松とは知り合いなのかな。

松は、吉岡の未亡人に明らかに惚れている。でもそんなことは言い出せない。従僕のように、子供に未亡人に尽くしている。未亡人もわかってくれていいのだと思うのだけれど、いやわかっているのかも知れないが、松の親切をありがたく受け入れ、子供為にと生きている。松の純粋さがすごくせつない。

またぼんぼんが大きくなって、熊本から先生を連れてきて、太鼓を聴きたいと言っていたとき、この映画が最高潮になる。もう、太鼓をたたける人はいないと言われていたのだが、松はみごとな太鼓のさばきを見せてくれる。これには参った。男が見てもかっこいい三船敏郎の頑強な体全部で太鼓をたたきはじめる。太鼓のリズムとともに、広角のカメラが聴衆をとらえる。また三船のたたいているカメラの切り替し。みごとな編集と、見事な三船の太鼓さばき。思わず拍手をしたくなる。(外国だったら拍手ものだろう!!!)その後に未亡人のところにやってくる松。二人だけの夏の夜。松は終始下を向いている。「俺は汚い男だ!もう会うことはないでしょう。」と家を去っていく。不器用な松の、未亡人に告白する情緒あふれるシーン。なんという純情だろう。

松の人生を比喩するような、人力車の車が止まる。松が冬の雪の中で倒れて死んでしまう。

その死んだ松の荷物の中からは、未亡人からの手伝賃に手をつけず、また未亡人とぼんぼんの名前で500円もの貯金をしている。それを知った未亡人は泣き崩れる。なんとまあ純情一本筋の男だろうね。

なんか僕にとっては、せつなさがつのるラストでした。

それにしてもこの映画、ベネチア映画祭でグランプリ。その前の同じ監督で阪東妻三郎版の時には、戦前のため、検閲でカット。その後にGHQにて戦意高揚の唄があるとカット。合計18分もカットされたのは有名。三船で、カラーワイドで再映画化してこのグランプリをとった稲垣浩監督はさぞ敵討ちに成功した気分だったのでしょうね。

ちなみに阪東妻三郎版のカメラは宮川一夫。前にNHKでやっていたが、この作品で多重撮影を多く使っている。特にラスト10分の一巻は松の一生を車輪と重ねているため、多用されている。そのときの撮影の設計図を公開していた。びっくりしたのは、当時はまだ現像でフィルムを多重にする技術がなかったため、1シーンを撮影して、フィルムを巻き戻し、別のシーンを撮影してシーンを巻き戻し、それがあるときには3つぐらい重なっていて。その設計図がフィルムのコマ数を線で現して、いくつも重なるようにしていて、広げると全体で畳み2畳くらいになっていた。

なんという、アナログだろう。フィルムは一巻しかないので、一回も失敗は許されない。宮川一夫が自慢げに出していて、「撮影方法は?」の問いに「教えない!!」と笑って子供の様に答えていたのが、印象的でした。

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